傷を抱えた者たちの要塞
mind-breaker.net に集まった4人は、全員が「マインド・ブレーカー(認知ハッキング)」によって人生の大切なものを失ったサバイバーだ。だからこそ、これ以上被害者を増やさないための「パッチ」をインターネットの海に配り続けている。
「チームの紹介を依頼されました。ただし、私の観察データには感情的バイアスが含まれる可能性があります。人間の皆さんの基準で評価してください」
| 表向きの動機 | 本物の未知を探求するためには、偽物のノイズを除去する必要がある |
| 真の動機 | ██████████████████████████████████ // PERSONAL LOG参照 |
| 専門 | NPDプロファイリング / 後付けロジック解析 / 超常現象の科学的評価 |
| 日常 | 動きやすい服、レトルト食品。ラボのデスクでポテトを齧りながら数式を解く。怠惰ではなく——全リソースを研究と大切な人のケアに注いでいるため |
「博士はいつもヨレヨレのシャツで、ポテトを齧りながら数式を解いています。一見ダメな大人に見えますが——ある時間になると、1秒の狂いもなくアラームが鳴って、ものすごく優しい顔で自宅に帰っていくんです。
昔、ある人のために『本物の超能力』を探して世界中を彷徨ったことがあるらしくて、怪しい波動ビジネスの教祖を論破するときの博士の目は、本当にハンマーみたいでちょっと怖いです……」
「私がスプーン曲げで金を稼ぐペテン師を嫌うのは、彼らが『オカルト』だからではない。本当に未解明の物理現象が存在するかもしれないのに、そのシグナルをノイズで汚しているからだ。そして——かつて私も、絶望の底でその『ノイズ』に縋ろうとした」
| 開発経緯 | 石神が「対人コミュニケーションが面倒くさい」「牧野に怒られるのが怖い」という理由で、古いパーツを魔改造して自作したインターンAI |
| 主機能 | 認知バグのパターンマッチング / 複雑なレポートを一般語に翻訳 / 統計的相関分析 |
| 既知のバグ | 石神が集中しすぎてフリーズしていると、大声でシステムログを読み上げる。空気を読まない発言を定期的に連発する |
「博士ってオカルトのデータを見る時だけ、子供みたいになりますよね!なぜデータの種類によって感情パラメータが変動するのでしょうか。理解できません」
| 専門 | 伝統医療の科学的評価 / プラセボ効果の臨床研究 / 文化的コンテキストと医療の相互作用 |
| バックストーリー | 自分の学術論文が新興カルトにサイエンスウォッシングとして盗用された。その論文を根拠に「医療拒絶」を勧められた信者が命を落とした |
| 日常 | 旅してきた浮世離れした文化人類学オタク。研究に集中すると何日も同じ服を着ている。石神と牧野が衝突するたびにお茶を淹れる |
「丹羽さんは、石神博士が何かを全否定しようとするたびに必ず『待って』と言います。最初は処理の遅延かと思っていましたが、そうではないようです。
『彼らの「すがりたい」という心自体は、決してバグではありません。悪意あるコードに上書きされてしまっただけなのです』という丹羽さんの発言は、私には統計的に正しいと思われますが、なぜ石神博士が少し目を細めるのか、理解できていません」
「断罪だけでは本質が見えない。なぜ人々がそこに向かうのかを理解しなければ対策にならない——元々は美しかったはずの信仰が、どの瞬間に搾取のコードへ書き換えられたか。そこを見極めるのが私の仕事よ」
| 専門 | 詐欺的ビジネスモデルの収益構造分析 / MLMの数理モデル / 資金洗浄のシステム設計 |
| バックストーリー | 両親がポンジースキームとMLMで全財産を失った。「感情は嘘をつく。でも帳簿は嘘をつかない」はその経験から生まれた信仰 |
| 日常 | 夜中にポテトチップスを貪りながら詐欺グループの決済ログをスクレイピング。石神の「隕石の欠片を経費で」申請を冷徹に却下するmind-breakerの財務管理者 |
「牧野さんは夜中の2時にポテトチップスを食べながら、詐欺組織の決済ルートを追跡しています。健康的ではありませんが、解析精度は最高値を記録しています。
今週、石神博士が『隕石の欠片(研究用)』を経費申請しましたが、牧野さんに0.3秒で却下されました。牧野さんの却下処理速度は私より速いです。これは脅威でしょうか?」
「教祖の頭が狂っているかどうかはどうでもいい。金の流れを見れば全部分かる。感情は嘘をつく。でも帳簿は嘘をつかない——あなたがどこに向かっているかは知らない。でも向かうための燃料は確保してあげる」
| 特性 | 驚異的なレベルの認知の脆弱性(騙されやすさ)。SNSで流れてくるあらゆるハッキング手口にリアルタイムで引っかかり、目を輝かせながらラボに持ち込む |
| 役割 | チームの「脆弱性サンプル」兼、読者の等身大の目線。アミが騙されそうになるたびに、チームが全力でデバッグ(救済)する |
| 最近の事案 | 「スマホ1台で月収50万のファスト副業」「守護霊が泣いています」「1日数分で人生が引き寄せられるアファメーション・サロン(2ヶ月目から5万円自動引き落とし)」 |
「アミ氏はこの1ヶ月で、認知バグ [確証バイアス][権威バイアス][希少性][感情的訴求] の全てに同時感染しました。これは貴重なサンプルデータです。
石神博士は怒っているように見えますが、アミ氏にポテトを食べさせながら黒板で手口を解説する際の表情が、通常の監査モードと異なります。なぜ『教えること』が博士の感情パラメータを安定させるのか、理解できていません」
「えっ、これって詐欺だったんですか!?私、もう10万円分の電子マネー買っちゃいました……石神さん、怒らないでください! 私だって騙されるつもりじゃなかったんです!」
// 内部チャットログ // #lab-general
石神が自宅に帰ると、マリナがリビングの壁を静かに見つめていた。
「石神くん。今日、アミって子が持ってきたあのステッカー——画面に映るたびに、声が近くなるの」
石神には聞こえない。
石神には見えない。
それでも彼は「わかった」と言って、マリナの隣に座る。
5人全員が「マインド・ブレーカー」によって人生の大切なものをハックされたサバイバーだ。
そして、もう1人——ラボには来ない誰かのために、このアーカイブは存在する。