チャン・チャン:マチュ・ピチュより大きいのに、誰も知らないアンデスの都
チムー王国の首都として14〜15世紀に最盛期を迎えた、世界最大の土造建造物群。面積20平方キロメートル以上に及ぶ泥レンガ(アドベ)の都市は、プレ・コロンブス期アメリカ大陸最大の都市のひとつ。インカ帝国に征服され滅んだが、マチュ・ピチュの影に隠れ続けている。
- エル・ニーニョによる洪水・侵食
- 違法採掘・盗掘
- 都市開発による周辺圧力
- 気候変動による砂漠化の変化
遺産の概要
チャン・チャンは、ペルー北部の乾燥砂漠地帯に広がる世界最大の泥レンガ建造物群。チムー王国の首都として9世紀から15世紀にかけて繁栄し、最盛期の推定人口は6万人以上とも言われる。
都市は9つの独立した「シウダデラ」(王宮複合体)を中心に構成されており、それぞれが高さ9〜12メートルの壁で囲まれている。壁面には精巧な幾何学模様・魚・鳥・海の生き物を描いたレリーフが残っており、海洋資源に依存したチムー文化の特徴を示している。
マチュ・ピチュとの対比
| 指標 | チャン・チャン | マチュ・ピチュ |
|---|---|---|
| 建設時期 | 9〜15世紀 | 15世紀 |
| 面積 | 20km²以上 | 約5km² |
| 最盛期人口 | 6万人超(推定) | 750人程度(推定) |
| 建材 | 泥レンガ(アドベ) | 石 |
| UNESCO登録 | 1986年 | 1983年 |
| 知名度 | 低 | 世界的 |
チャン・チャンの面積はマチュ・ピチュの4倍以上。しかし年間訪問者数はマチュ・ピチュの数百万人に対し、チャン・チャンは数十万人にとどまる。
なぜここまで知られていないのか
理由のひとつは素材だ。マチュ・ピチュの花崗岩の石組みは、500年の雨風に耐えてきた。チャン・チャンの泥レンガは、晴天が続く砂漠気候では保たれるが、エル・ニーニョ現象による集中豪雨で急速に崩壊する。ビジュアルとしての「廃墟の美しさ」が維持しにくい。
もうひとつは歴史の文脈だ。チムー王国を征服したのはインカ帝国。スペインのコンキスタドールが「文明」として記録したのはインカの記録だった。チムーの口承・記録の多くは征服とともに失われ、後の考古学的調査で少しずつ再構築されてきた。
現在の脅威
チャン・チャンは1986年の世界遺産登録と同時に危機遺産に指定された(2010年にリストから除外されたが、現在も脆弱な状態が続く)。
主要な脅威はエル・ニーニョによる異常降水。1983年、1997年の大エル・ニーニョでは、泥レンガの壁面が大規模に崩落した。気候変動によってエル・ニーニョの頻度と強度が増す傾向がある中、長期的な保全の見通しは楽観視できない。
違法採掘も深刻で、観光客の増加とともに周辺の都市開発圧力も高まっている。
記録メモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| UNESCO ID | 366 |
| 登録年 | 1986年 |
| 危機遺産指定 | 1986年〜2010年 |
| 最盛期 | 14〜15世紀 |
| 総面積 | 約20km² |
| シウダデラ数 | 9棟 |
| 壁の高さ | 最大12メートル |
| 征服年 | 1470年頃(インカ帝国による) |