秦始皇帝陵:8000体の兵馬俑と、「色の消滅」を見ながら発掘した考古学者たち
中国初の皇帝・秦の始皇帝の陵墓。陵墓本体(高さ76メートルの土山)は現在も未発掘だが、東側の副葬坑から8,000体以上の等身大テラコッタ兵士(兵馬俑)が発見された。発掘当初は鮮やかな彩色が施されていたが、空気に触れると数分で色が消えてしまい、保存技術の確立を待ちながら発掘が進められてきた。
- 大気汚染による顔料の劣化
- 観光客の呼気・体温による湿度管理の難しさ
- 地下水の浸透
- 発掘による不可逆的な環境変化
遺産の概要
秦始皇帝陵は、中国陝西省西安市臨潼区に位置する中国初の皇帝・秦の始皇帝(紀元前259〜210年)の陵墓だ。陵墓本体は高さ約76メートルの巨大な土山として現存するが、内部はいまだ発掘されていない。
世界的に有名な「兵馬俑(へいばよう)」は陵墓の東約1.5キロメートルに位置する副葬坑から発見されたものだ。1974年に農民が井戸を掘っていたところ偶然発見したのが最初で、現在は1〜3号坑が発掘・公開されており、8,000体以上の等身大テラコッタ製兵士が確認されている。
発掘と「色の消滅」
兵馬俑の大きな秘密のひとつは、発掘直後の彩色だ。土中に2200年以上埋まっていた兵馬俑は、出土時には赤・緑・青・紫・白など鮮やかな顔料で彩色されていた状態で現れる。しかし空気に触れた後、顔料は72〜96時間以内に急速に剥落・退色してしまう。
発掘当初、考古学者たちはその美しい色彩が消えていく様子を目の当たりにしながら作業を続けた。現在展示されている兵馬俑のほとんどがいわゆる「素焼き色」のテラコッタ色に見えるのは、発掘後に色が消えてしまった状態だ。本来はカラフルな彩色兵士の群れだった。
現在は顔料の定着技術(ポリエチレングリコール溶液塗布など)が開発されており、彩色が残る俑の発掘においては出土後すぐに処理することで一部の色を保存することが可能になっている。
一体一体異なる顔
兵馬俑のもう一つの特徴は、8000体以上が存在するにもかかわらず、一体一体の顔が異なっているように見える点だ。これについてはモジュール式製作説が提唱されている。
胴体・腕・頭・顔のパーツをそれぞれ別々に成型し、最終的に組み合わせるという方法で、複数のモデル顔パーツを組み合わせることで大量生産しながらも個体差を出す。この手法は現代の工業デザインにおける部品の組み合わせカスタマイズと原理的に同じだ。ただし全員が実際の人物をモデルにしていたとする説は証拠が薄く、現在は否定的に見られている。
未発掘の陵墓本体
陵墓の本体部分——始皇帝が実際に埋葬された中心部——は現在も発掘されていない。司馬遷が紀元前2世紀に著した『史記』には、陵墓内部に水銀で作られた川と海が流れ、天井には宝石で星座が描かれ、機械仕掛けの護衛装置がある——という記述がある。
現代の調査で、陵墓周辺の土壌から異常に高い水銀濃度が検出されており、『史記』の記述が単なる伝説ではない可能性が示唆されている。中国政府は、発掘技術がまだ陵墓内部の文物を適切に保護できるレベルに達していないとして、現時点では発掘を凍結している。
記録メモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| UNESCO ID | 441 |
| 登録年 | 1987年 |
| 陵墓本体の高さ | 約76m(土山) |
| 兵馬俑の発見 | 1974年(農民による偶然の発見) |
| 確認された俑の数 | 8,000体以上 |
| 彩色の消滅速度 | 出土後72〜96時間以内 |
| 陵墓本体の発掘状況 | 未発掘(凍結中) |