ウェストミンスター:「ビッグ・ベン」は時計台ではなく鐘の名前だった
ウェストミンスター寺院・旧ウェストミンスター宮殿(国会議事堂)・セント・マーガレット教会からなるロンドンの権力中枢。1066年以来すべての英国君主が戴冠した寺院と、860年以上毎時鐘を鳴らし続ける「ビッグ・ベン」を擁する。「ビッグ・ベン」という名は時計台ではなく鐘の名前であり、時計台の正式名は2012年に「エリザベス・タワー」に改称された。
- 大気汚染による石材劣化
- テロ・セキュリティ上のリスク
- テムズ川の洪水リスク
遺産の概要
ロンドンのテムズ川北岸、ウェストミンスター地区に集中するこの遺産群は、英国の政治・宗教・文化の中枢を形成してきた三つの建造物から構成される。ウェストミンスター寺院、旧ウェストミンスター宮殿(現在の英国議会)、そしてセント・マーガレット教会だ。
ウェストミンスター寺院の起源は960年頃のベネディクト会修道院にさかのぼり、現在の建物は1042年からエドワード証聖王が建設を始めたものを基礎としている。1065年に献堂式が行われ、翌1066年のウィリアム1世(征服王)の戴冠式以来、英国君主の戴冠式はすべてここで執り行われてきた。
960年以上続く戴冠式の場所
ウェストミンスター寺院が持つ最も重要な機能のひとつが、英国君主の戴冠式の場であることだ。
1066年のウィリアム征服王から2023年のチャールズ3世まで、40人の君主がここで戴冠した。唯一の例外はエドワード5世(1483年、即位前に失踪・死亡と推定)とエドワード8世(1936年、戴冠式前に退位)だ。960年以上にわたって同一の場所で同一の儀礼が継続されるという事例は、世界でもほとんど類を見ない。
寺院内には歴代の王・女王のほか、チャーサー・ニュートン・ダーウィン・ディッケンズなど著名人の墓が1,000以上存在する。「ポエッツ・コーナー」と呼ばれるエリアには英国文学の巨匠たちが眠っている。
「ビッグ・ベン」の誤解
ロンドンの象徴として世界に知られる「ビッグ・ベン」だが、その名称に関して一般的な誤解がある。
「ビッグ・ベン」という名は、時計台そのものではなく、塔の中に設置された大鐘の名称だ。重さ13.5トンのこの鐘は1858年に鋳造され、1859年から時を告げ続けている。名前の由来については、工事を監督したベンジャミン・ホール卿の愛称という説と、当時の有名なボクサー「ビッグ・ベン・カントン」にちなむという説がある。
時計台の正式名称は長らく「クロック・タワー」だったが、2012年のエリザベス女王即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)を記念して「エリザベス・タワー」に改称された。したがって現在の正確な呼称は「エリザベス・タワーのビッグ・ベン」ということになる。
国会議事堂の誕生——火災と再建
現在の国会議事堂の建物は、1834年の大火災後に建設されたものだ。旧ウェストミンスター宮殿は1834年10月16日の夜、中庭での大規模な火災によってほぼ全焼した。
この火災の原因が興味深い。議会の財務記録に使われていた木製の集票棒(タリースティック)が大量に廃棄されることになり、旧宮殿の炉で大量に燃やされた。この燃焼作業が過熱して古い煙道に引火し、旧宮殿全体に延焼した。政府の記録廃棄方法の失策が、国家的建築の喪失を引き起こした。
再建された現在の建物はネオゴシック様式で、チャールズ・バリーとA・W・N・ピュージンが設計した。1870年に基本的に完成し、時計塔(現エリザベス・タワー)も含めた現在の姿が形成された。
記録メモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| UNESCO ID | 426 |
| 登録年 | 1987年 |
| 寺院献堂式 | 1065年 |
| 初の戴冠式 | 1066年(ウィリアム1世) |
| 最新の戴冠式 | 2023年(チャールズ3世) |
| 旧宮殿火災 | 1834年10月16日 |
| ビッグ・ベン鐘の初打 | 1859年 |
| 時計台正式改称 | 2012年(エリザベス・タワー) |