済州火山島と溶岩洞窟群:韓国最南端、火山が作った三つの世界
韓国最南端の火山島(面積1,849km²)。漢拏山(標高1,950m・韓国最高峰)、城山日出峰(180万年前の水中噴火で形成した凝灰岩要塞)、拒文岳溶岩洞窟系(世界最長クラスの溶岩トンネル群)の三要素で2007年にUNESCO世界遺産に登録。「海女(ヘニョ)」文化は無形文化遺産にも登録されている。
- オーバーツーリズム(年間1,500万人超の観光客)
- 外来種による生態系への影響
- 地下水の過剰取水
遺産の概要
済州島は韓国本土の南端から約80km南の黄海・東シナ海の境界付近に浮かぶ火山島。面積1,849km²は韓国最大の島であり、北緯33度に位置することから「韓国のハワイ」とも呼ばれる温暖な気候を持つ。
UNESCO世界遺産に登録されているのは島全体ではなく、地質学的・景観的に特に価値が高い3つのエリア——漢拏山天然保護区・城山日出峰凝灰丘・拒文岳溶岩洞窟系——の複合体。それぞれが異なる火山活動の産物であり、火山地形の「三種の異なる顔」を一島内に持つことが評価された。
漢拏山:韓国最高峰の火山
漢拏山(한라산)は標高1,950mで韓国最高峰。済州島の火山活動の主体となった楯状火山で、現在は「不活火山」とされているが完全な死火山ではない。山名の「漢拏(ハンラ)」は「天の川を引っ張ることができる(漢は天の川を指す)」という意味で、山頂が雲の上まで届くほど高いことを示す。
山頂部には白鹿潭(ペンノクダム)と呼ばれる火口湖がある。直径約500m、深さ約108m。降水量によって水位が変動し、夏の増水期と冬の積雪期では全く異なる景観を見せる。漢拏山国立公園は四季を通じて登山者を集め、年間入山者数は約100万人に達する。
城山日出峰:海底から生まれた要塞
城山日出峰(성산일출봉)は約180万年前の浅海底での水中噴火によって形成した凝灰岩質の丘陵。海面から約182mの高さで、東側のみが陸続きで残りの三方を海食崖に囲まれている。頂上には直径約600m・深さ90mのすり鉢状の火口がそのまま残る。
朝鮮八景のひとつに数えられてきた「城山日出峰の日の出」は現在も最大の見所で、夏至前後の日の出時には数千人が頂上に集まる。地形は凝灰岩が波浪によって侵食されながら形成されたもので、断面を見ると水中噴火時の火山砕屑物の積層が鮮明に確認できる。
海女(ヘニョ):世界遺産の島を泳ぐ無形文化
済州島固有の「海女(ヘニョ、해녀)」文化は、酸素ボンベを使わずに素潜りで海産物(アワビ・サザエ・ウニなど)を採取する女性ダイバーの生業・共同体文化。最大水深20m以上、1回の潜水で2分以上息を止める技術は経験と訓練の産物だ。
かつては数万人いた海女の数は現在2,000人を割り込んでおり、平均年齢は70歳を超えている。2016年のUNESCO無形文化遺産登録は消滅の危機にある文化への国際的な認知を与えたが、後継者不足は解消されていない。世界遺産の観光地として繁栄する済州島で、その土地固有の生業文化が静かに幕を閉じようとしている。
記録メモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| UNESCO ID | 1264 |
| 登録年 | 2007年 |
| 島の面積 | 1,849km² |
| 漢拏山標高 | 1,950m(韓国最高峰) |
| 城山日出峰の高さ | 約182m |
| 万丈窟の全長 | 約13.4km |
| 海女の現役人数 | 約2,000人以下 |
| 無形文化遺産登録 | 2016年(海女文化) |