プランバナン寺院群:処女伝説と一夜の神殿、ボロブドゥールの陰に隠れたヒンドゥーの傑作
9〜10世紀のマタラム王国が建設したジャワ島最大のヒンドゥー教神殿群。高さ47mのシヴァ神殿(ロロ・ジョングラン)を中心に240の神殿が配置される。「一夜で千の神殿を建てよ」という伝説の舞台であり、1006年の大地震以降に廃棄された。同じジャワ島にあるボロブドゥール(仏教遺跡)と比べ知名度では劣るが、建築的・芸術的高さは同等とされる。
- 地震(2006年ジョグジャカルタ地震で一部損傷)
- 火山活動(メラピ火山の噴火リスク)
- 観光客の増加と周辺の無秩序な開発
遺産の概要
プランバナン寺院群は、インドネシア・ジャワ島中部のジョグジャカルタ特別州とジャワ中部州の境界近くに位置するヒンドゥー教の神殿複合体。9〜10世紀のマタラム王国(ヒンドゥー系)が建設した。
中央部には高さ47メートルのシヴァ神殿「ロロ・ジョングラン」をはじめ、ヴィシュヌ神殿(高さ34m)・ブラフマー神殿(高さ34m)の三大神殿が鼎立し、周囲に計240の神殿が整然と配置される。
建設ピークは9世紀中頃から10世紀初頭で、1006年(または10世紀末)の大地震による被害で王国の中心が東ジャワに移動した後、プランバナンは徐々に廃棄されていった。その後数百年の間、ジャングルに埋もれ石材の多くが地元住民に建材として持ち去られた。体系的な発掘・修復が始まったのは20世紀に入ってからだ。
ロロ・ジョングランの伝説
プランバナンには「ロロ・ジョングラン(美しい処女)」という地元の民話が伝わる。
バンドゥン・ボンドウォソという王子がロロ・ジョングランという王女に求婚した。王女は断るために「一夜で千の神殿を建てることができれば結婚する」と条件を出した。王子は精霊(ジン)の力を借りて夜明け前に999の神殿を完成させようとした。
王女はそれを阻止するために女性たちを集めて臼を叩かせ、炊事の煙を上げさせた——鶏が「夜明けだ」と錯覚して鳴き、精霊が夜明けだと思って作業を止めた。
激怒した王子は王女を千番目の石像にしてしまった——ロロ・ジョングラン神殿の中にある「ドゥルガー像」がその王女の姿だとされる。
建築の構造と芸術性
プランバナンの建築的特徴は、垂直性の強調にある。シヴァ神殿(ロロ・ジョングラン)の高さ47メートルは、ボロブドゥールの最高部(35メートル)を上回る。表面には精密なレリーフ彫刻が刻まれ、インドの叙事詩「ラーマーヤナ」の場面が帯状に連続する。
シヴァ神殿の内部には四つの部屋があり、シヴァ像(高さ3m)・ガネーシャ像・ドゥルガー像(ロロ・ジョングラン)・アガスティヤ像が安置されている。
世界的知名度でボロブドゥールに劣るのは、廃棄・破壊された期間が長く、発掘・復元の完成度でボロブドゥールに及ばないことが一因だ。しかし彫刻の密度・繊細さではプランバナンがボロブドゥールに引けを取らないという評価が建築史家の間では一般的だ。
地震と継続する修復
プランバナンの立地はジャワ島中部——活火山メラピ山の麓に近い地震多発地帯だ。
2006年5月のジョグジャカルタ地震(M6.3)では、プランバナンの外苑神殿群を中心に2,000以上の石材ブロックが崩落した。この修復は現在も続いており、各ブロックに番号を振って元の位置を記録しながら積み直す「アナスティローシス」工法が採用されている。
1,000年以上前に廃棄されて以来の複雑な崩落・移動の歴史があるため、すべてのブロックの「元の位置」を特定することは不可能に近い。完全な復元より「可能な限りの記録と安定化」が現実的な目標とされている。
記録メモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| UNESCO ID | 642 |
| 登録年 | 1991年 |
| 建設年代 | 850〜930年頃 |
| 主要神殿高さ | シヴァ神殿47m・ヴィシュヌ/ブラフマー神殿34m |
| 神殿総数 | 240(主要3+外苑群) |
| 廃棄時期 | 1006年頃(大地震後) |
| 2006年地震被害 | 崩落ブロック2,000以上 |
| 最寄りの活火山 | メラピ山(約30km北西) |