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HERITAGE // 世界遺産・人類の記録アーカイブ 文化遺産
HRG-005 2026-06-09
隠れた遺産 — 重要性は世界的だが、広く知られていない遺産の深掘り記録

パルミラ:砂漠に咲いた帝国の都が、2015年に爆破された

所在地 シリア・ホムス県
時代 紀元前2千年紀〜紀元後3世紀(最盛期はローマ時代)
UNESCO登録年 1980年
UNESCO基準 (i) (ii) (iv)
保全状態 危機遺産 ⚠
UNESCO ID #23 ↗
SUMMARY

シリア砂漠のオアシスに栄えたパルミラは、ローマ帝国とパルティア(ペルシア)の中継地として繁栄した。3世紀には事実上独立してローマを脅かす「パルミラ帝国」を形成。2015年、ISIS(イスラム国)の支配下で神殿・凱旋門・多くの柱廊が組織的に爆破された。

⚠ 主な脅威
  • ISISによる組織的破壊(2015〜2017年)
  • シリア内戦による継続的被害
  • 復旧・記録の困難
  • 略奪による遺物の散逸
シリア中東ローマ帝国戦争被害危機遺産破壊された遺産
セキュア通信ログ // HRG-005 AES-256
Dr.石神
ゼノビア女王は3世紀にパルミラを率いてエジプトまで版図を広げ、ローマに真っ向から挑んだ。女性指導者がローマ帝国に戦争を仕掛けた——この歴史的事実がなぜ一般に知られていないのか
パッチ
2015年5月にISISが占領し、8月にベル神殿を爆破。考古学者のハーレド・アサード氏(83歳)は遺物の隠し場所を拷問されても口を割らず、処刑された。記録する側の犠牲も記録に残すべきだ
牧野
爆破の映像がリアルタイムでSNSに流れた。人類は初めて、世界遺産が破壊される瞬間をライブで見た。その衝撃の割に、パルミラ自体を知っている人は少ない

遺産の概要

パルミラはシリア中部の砂漠に位置するオアシス都市。紀元前から交易路の要衝として栄え、ローマ時代に最盛期を迎えた。長さ1.2kmの柱廊道路、ベル神殿、バアルシャミン神殿、凱旋門——これらがシルクロードの要衝に建設された。

ゼノビア女王とパルミラ帝国

3世紀、パルミラはゼノビア女王(在位271〜272年頃)の下でローマからの独立を宣言し、「パルミラ帝国」を形成。エジプト・小アジア・シリアを支配下に置き、ローマ帝国の東半分に匹敵する版図を誇った。

ゼノビアはギリシャ語・ラテン語・エジプト語・アラム語を操り、哲学者や詩人を宮廷に集めた知識人でもあった。最終的にローマ皇帝アウレリアヌスに敗れてローマへ連行されたが、晩年はローマ近郊の別荘で暮らしたとされる。

2015年:世界遺産の爆破

2015年5月、ISISがパルミラを占領。

  • 2015年8月: ベル神殿(紀元32年建立)を爆破
  • 2015年8月: バアルシャミン神殿を爆破
  • 2015年10月: 凱旋門を爆破
  • 2016年: 凱旋柱廊の多くの柱を破壊、タドモル城塞を爆破

83歳の考古局長ハーレド・アサード氏は、遺物の保管場所を白状するよう求める拷問に抵抗し、公開処刑された。彼は1963年からパルミラの発掘・保護に携わってきた。

現在の状況

2016年にシリア政府軍がパルミラを奪還。破壊された構造物の一部は3Dスキャンデータや写真を元に復元計画が進んでいるが、2017年に再度ISISが一時占領するなど、状況は不安定だ。シリア内戦の継続により、体系的な修復・調査は極めて困難な状態が続いている。

爆破を免れた建造物や彫刻の多くは事前に避難・移送されたが、略奪された遺物が闇市場に流れた可能性も高い。

記録メモ

項目内容
UNESCO ID23
登録年1980年
主要破壊年2015〜2016年(ISIS支配下)
爆破された主要建造物ベル神殿、バアルシャミン神殿、凱旋門
犠牲になった考古学者ハーレド・アサード氏(83歳、2015年処刑)
現状危機遺産指定継続中